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WAIS-Ⅲとは?(1)

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 こんにちは。よもぎです。

発達障害の検査でよく使われる「WAIS-Ⅲ」ですが、イマイチどんなものなのか。金額は?時間は?結果から何がわかるの?ということがあまり知られていませんよね。

今日は、検査を受けたいな、受けたんだけど結果待ちで不安だな、という方向けに「WAIS-Ⅲ」を受ける前の心得や、基礎知識などを紹介したいと思います。

WAIS-Ⅲってそもそも何?

読み方は「ウェイス・スリー」。知能検査の一種で、いわゆる「IQ」を検査するテストです。IQを測るテストの中にも色んな方式*1があり、そのうちの「ウェクスラー式知能検査」という方式の成人用テストの名称が「WAIS-Ⅲ」です。
ちなみに同じ「ウェクスラー式知能検査」の児童向けテストにあたるのが「WISC-Ⅲ」「WISC-Ⅳ*2」です。

そもそも「IQ」とは、「同世代の集団においてどの程度の発達レベルか」を表した数値です。平均値=「IQ100」と決まっていますので、同世代平均に比べて点数が高ければIQが100以上、平均より低ければIQ100以下、という数字になります。
学生時代よく耳にした偏差値と同じ理屈ですね。

なぜWAIS-Ⅲを受けるの?何がわかるの?

WAIS-Ⅲでは大きく分けて4種類の能力のIQを検査します。それにより、「どんなことが得意でどんなことが苦手なのか」がわかるようになります。

発達障害があると、一般的に「得意なことと苦手なことの差が大きい」場合が多いため、WAIS-Ⅲの結果が凸凹を調べるヒントになるということなのです。

そのため、IQが高ければ良くて、低ければ悪い、というようなことではありません。IQ値の凸凹などから、『自分の困り感がどんなことに由来しているのか』を調べるようなものと考えると良いと思います。

WAISを受けたい、受ける人のQ&A

どうやったら受けられるの?

発達障害の診断が下りている方の場合、主治医の先生から勧められることケースと、自分から望んで検査を受けるケースがあります。既にかかりつけの病院がある場合は、先生に相談してみるのが良いと思います。(個人病院の場合は取り扱いがなかったりして、総合病院を紹介されることもあるようです)

当日は、主治医の先生ではなく、専門の『臨床心理士』の方が試験官を担当します。(主治医の先生が臨床心理士の資格がある場合は、先生が担当することも)
試験官と言っても通常の筆記テストなどとは違って、原則1:1で、心理士さんからの質問に口頭や筆記で答えていく形の試験です。

態度や受け答えの速度なども見られているそうなので、自分の凸凹を知るためにはその辺りも気負わずになるべく自然な自分の様子を見ていただくのがいいかもしれません。

※2018/2/8追記
「ウェクスラー 成人知能検査 受けたい」という検索をされて記事を見て下さる方が多いようなので、一言追記いたします。
私は、発達障害を疑って受診をする前に「WAIS-Ⅲ」の存在を知っていたので、病院を探す際、電話で「発達障害を疑っています。WAIS-Ⅲなどの知能検査は受けられますか?会社に報告しなくてはいけないので、根拠となる検査も受けたいのですが...」と事前確認していました。

所要時間は?お金は?

所要時間は、被験者の回答にかかる時間にもよりますが、90分~2時間程度かかることが多いようです。
金額については、保険適用なら1,500~数千円、適用されなければ2~3万円かかることがあるそうです。一般的に大きな病院にかかっていると保険適用となるパターンが多いようですが、気になる方は事前に各病院に確認しておくのがベストです。

当日は薬を飲んでもいいの?

既に発達障害と診断されていて、ストラテラやコンサータ、安定剤などを処方されている方の場合、当日の服薬は必ず事前に主治医に確認しましょう。
「飲んできて良い」という先生、「飲まずに素の状態を確認したい」という先生など、方針は様々のようです。

結果はどのくらいで出るの?

これも病院によってまちまちですが、大体2週間から1ヶ月程度かかる場合が多いようです。先生に確認しつつ、ここは諦めて気長に待つようにしましょう。

結果はどんなふうに渡されるの?

これも病院によってまちまちのようです。私が聞いたことがあるのは以下のパターンです。

・全ての点数や心理士のコメントまで書かれた紙がもらえる、グラフまである
・全ての点数など、数値が書かれた紙のみがもらえる
・一部の数値が書かれた紙がもらえる、口頭で補足
・口頭でのみ数値やコメントを教えてもらえる
・そもそも結果を全く教えてもらえない

細かく内容をフィードバックしてもらえることもあれば、そうではないこともあって、これも残念ながらまちまちなのだそうです。

ちなみに私ははじめ、結果を見せてもらうことができませんでした。「自分の凸凹を知って、普段から困っていることに活かしたい。そのために有休を取ってお金を払って試験を受けました。どうか数値だけでもいいので教えて下さい」と食い下がって結果を知りました。

※当時の経緯はこちらにまとめています。
www.yomocracy.com

WAIS-Ⅲの検査内容と結果

では、WAIS-Ⅲの検査内容や結果は具体的にどんなものなのか?ということを説明したいと思います。

通常、内容を知らない状態で検査を受けた方が良い、とされています。そのため、ここでは具体的な検査の内容については紹介しません。テストではないので、点数が良ければいい、というわけでもないですし、これから検査を受ける方はどうぞそのままの状態で臨んでくださいね!(どんなことやるんだろう?という不安な気持ちはわかりますので、そこだけ、ここで見て安心してください)

下位検査項目=検査内容

検査では、通常16種類のテストを受けます。これを「下位検査項目」と呼びます。とても大事な項目なので覚えておきましょう。種類やテストの内容、そこからわかる能力の概要は以下の通りです。

項目名 試験の内容 主な能力の内容
単語 単語の意味を答える 知識力、言語発達水準
類似 二種類の言葉の類似点を答える カテゴリー分けの思考力、説明力
知識 一般知識について説明する 一般知識力
理解 日常生活のルールや常識について説明する 知識や経験を実践に活かせる力
算数 小学校高学年の算数の問題を暗算で解く 計算力
数唱 耳で聞いた数字をルールに則り復唱する 聴覚的な短期記憶力
語音 耳で聞いた数字や五十音をルールに則り復唱する 五十音、数字の順を整理する力
配列 イラストをストーリー順に並べかえる 結果を予測する力、時間的順序の理解力
絵画 一部が欠けたイラストを見せられ、足りない部分を指摘する 視覚刺激に反応する力、長期記憶力
積木 積木を見本通りに並べる 全体を部分に分解し、再構築する力。非言語的な概念を形成する力
行列 一部が空欄の図に、当てはまるパーツを探して当てはめる 類似点を探し出して推測する力
記号 見本の記号を、問題文の中から見つける 視覚的探索の速さ
符号 簡単な記号を見本通りに書き写す 指示に従う力。事務処理速度、視覚的短期記憶力
組合せ パズルを組み合わせて見本と同じ形を作る 思考の柔軟性、部分間の関係を予測する力

 ※表中の色分けについては次項『群指数』参照

当日はこの16種類のテストを受けることになります。回答内容や所要時間から心理士の先生が得点を計算し、それぞれに1~19点の点数がつけられます。

群指数

さきほどの16種類のテストの結果から、大きく分けて4つの項目『群指数』に分けてIQの数値が出されます。それぞれの群指数でわかる能力は以下の通りです。

項目 能力 該当する下位検査項目
言語理解(VC) 言葉による知識を状況に応じて利用できる力 単語、類似、知識
作動記憶(WM) 注意を維持して耳で聞いた情報を処理する力 算数、数唱、語音
知覚統合(PO) 目で見た情報を取込、要素を関連付けてまとめる力 完成、積木、行列
処理速度(PS) 目で見た情報を事務的に多く正確に処理する力 符号、記号


該当する下位検査項目の合計点から、それぞれのIQが計算されるという仕組みです。
学生時代の模試の、「科目ごとの偏差値」みたいなものと考えるとわかりやすいです。

言語性IQと動作性IQ

群指数をさらに2つのグループに分け、「言語性IQ」と「動作性IQ」が出されます。能力と、該当の群指数は以下の通りです。

項目 能力 該当する群指数
言語性
(VIQ)
・耳で聞いた情報を処理する能力
・言葉の知識、言葉を使って考えたり表現したりする力
・生育環境、学習環境層などの影響を受けやすい
言語理解、作動記憶
動作性
(PIQ)
・目で見た情報を処理する能力
・非言語的な知識や、空間的な動きの力
・生まれつきの能力で、後天的影響を受けにくい
知覚統合、処理速度

 
群指数と同様に、言語性・動作性それぞれのIQが計算されます。
模試の例えで言えば、「2科目偏差値」みたいなものですね。

全検査IQ

言語性IQと動作性IQから出された「総合的なIQ」です。一般的に「IQ」と言われるのはこの全検査IQのことを指します。模試の「総合偏差値」ですね。

知的発達水準や、出現割合は以下の通りです。

全検査(FIQ) 知的発達水準 割合
130以上 非常に高い 2.2%
120~129 高い 6.7%
110~119 平均の上 16.1%
90~109 平均 50%
80~89 平均の下 16.1%
70~79 境界線 6.7%
69以下 精神遅滞 2.2%


平均値は100で、85~115の間に約68%の人が、70~130の間に95%の人が収まるようになっています。残りの5%はIQ130以上と、IQ70以下で『異常値』とされています。

IQ70以下が「知的障害」の判定基準の1つとなり、逆にIQ130以上も支援が必要になる場合があります。(2E教育など)

その他、心理士のコメント

上記のテストの結果や、当日の受験態度などから、心理士さんが「どんなことが得意でどんなことが苦手」など丁寧に分析をしてくれる場合があります。


以上がWAIS-Ⅲのテスト内容と結果についての概要です。

結果をこれから受け取る方へ

先程述べた通り「どの項目の結果を教えてもらえるのか」は残念ながら人それぞれになってきます。これは私の個人的なおすすめなのですが、「群指数」はもちろんのこと、「下位検査項目」はなるべく詳細に教えてもらう方が良いと思います。

ネットでは「言語性IQと動作性IQに差がある場合は発達障害の可能性が高い」という情報が多く、皆さんIQ値だけに気を取られがちです。
でも本当にその人の凸凹をきちんと見るためには「下位検査項目」の点数が大切なのだそうです。

もしも受け取った結果の紙に記載されていなかったり、口頭でもスルーされてしまったりした場合、「点数を知りたい」とお願いしてみることをおすすめします。(私も、何度か粘って教えてもらうに至りました...)


じゃあ、結果については具体的に何をどう見ればいいの?というお話は、次の機会に紹介したいと思います!

本日も最後までお読みくださりありがとうございました😊

→NEXT:WAIS-Ⅲとは?(2)

*1:ウェクスラー式知能検査、田中ビネー知能検査、KABC心理・教育アセスメントバッテリー等がよく使われる

*2:Ⅳは最新のテストのよう。アメリカでは成人向けのWAIS-Ⅳも進んでいるようですが日本では2017年現在未導入。