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WAIS-Ⅲとは?(2)

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こんにちは、よもぎです。
前回に引き続き、WAIS-Ⅲの内容について話していきたいと思います。
前回:WAIS-Ⅲとは?(1)

今回は、結果をもらったけれど、どういう意味?こんな数値が出たけど私は発達障害なの?ちがうの?ここが高いとどんなことが得意なの?といった、結果の見方について私が調べたことを紹介していきたいと思います。

WAIS-Ⅲの結果の見方

はじめに断っておきたいのですが、以下の情報は素人が、複数のお医者さん、心理士さん、当事者の方からかき集めた情報をまとめたものになりますので予めご理解いただけると幸いです。

それでもそれを公開するのは、「知りたいのに知る機会がない」当事者の方があまりにも多いのではないかと思ったからです。私がかき集めてきた情報が何かのヒントになればと思ったので、まとめてみました。

WAIS-Ⅲで発達障害の診断は下りるのか

私見ですが、WAIS-Ⅲの結果で発達障害の診断が降りるとは一概には言えません。
この検査でわかることは「外部からの刺激に対し、どんな反応をするのか」「どんな特性があるのか」ということです。

「私って発達障害なのかな?」「こういう結果が出てしまったけど、ダメなのかな?」「人生終わった」

ということではなく、まずはじっくり自分の結果を向き合ってみてほしいなあと思っています。

全検査IQについて

一般的に言われる「IQ」=全検査IQとなります。詳細については割愛いたしますので、前回の記事の最後を参照ください。

www.yomocracy.com

 

言語性IQについて

項目 能力 該当する群指数
言語性
(VIQ)
・耳で聞いた情報を処理する能力
・言葉の知識、言葉を使って考えたり表現したりする力
・生育環境、学習環境、社会階層などの影響を受けやすい
言語理解、作動記憶

言語性IQが高い人は、耳で聞いた情報を処理する能力が高かったり、言葉を使うこと(文章を書く、人前で説明するなど)が得意と言われています。

また、生育環境や学習環境などの後天的影響を受けやすい項目でもあります。
受けた方はわかると思うのですが、「日常生活ではあまり聞いたことのない言葉」の意味を説明したりするテストを含みますので、当然学習機会の多かった人の方が点数が高く出やすいと思われます。

でもこれはただの勉強のテストではないので、「聞いたこと・見たことがあるものを知識として蓄えておけるか」「適切に自分の知識を組み合わせて、答えを作り出そうとできるか」という部分も含め、総合的に判断されていると考えてよいと思います。

動作性IQについて

項目 能力 該当する群指数
動作性
(PIQ)
・目で見た情報を処理する能力
・非言語的な知識や、空間的な動きの力
・生まれつきの能力で、後天的影響を受けにくい
知覚統合、処理速度

動作性IQが高い人は、視覚での情報処理が得意だったり、体を動かすのが得意と言われています。実際、スポーツをしている人は動作性IQが高いことが多いそうです。*1
あとは空間認知力が高く、感覚派、という部分もあるのかなと思います。

ディスクレパンシーについて

言語性IQと動作性IQの差を「ディスクレパンシー」と呼びます。
このディスクレパンシーが「15」以上ある場合、発達障害の疑いが強い、と一般的に言われています。(後述しますが、必ずしもそうではありません)
そして、差が大きければ大きいほど、障害の度合いが強いとも言われます。

●言語性IQ>動作性IQ となる場合

一般的には、聴覚優位が多いと言われます。また、広汎性発達障害の中では、アスペルガー(ASD)の方にこの傾向が出やすいとも。

【注意※潜む問題点】
(1)環境により知識が習得*2されており、言語性IQだけが突出してしまうパターン
  ⇒いわゆる、高学歴なのに仕事ができないパターンになりがち
(2)抑うつ状態で運動性課題が上手くできず、動作性IQが低く出るパターン
(3)動作性IQの検査項目には「時間制限」があるため、「時間制限」に対して緊張が高まって力を発揮できないパターン
  ⇒共に「二次障害」や「精神的な」問題が影響している

どうでしょう、成人して急に問題が表面化した、大人の発達障害の方に当てはまりやすいようにも思います。

今、目の前にある数値には、自分の素の能力だけではなく、そういう様々な【潜む問題点】が絡んでくることを認識するのが大切だと思います。

●言語性IQ<動作性IQ となる場合

一般的には、視覚優位であることが多いと言われています。広汎性発達障害の中では、高機能自閉症の方にこの傾向が出やすいそうです。
身体を動かしたり、身体機能をうまく使いこなせる場合も多く、バイリンガルの児童などもこの偏りになることが多いそうです。

また、聴覚刺激だけでは物事を理解しにくいですが、視覚刺激を提示するとすんなり理解して作業ができるタイプが多いです。「説明だけではわからないけど、同時に図や資料が手元にあればわかる人」はこういうタイプが多いのかなという印象です。
動作性が高いと作業への困難が少ない場合が多いため、比較的「一般的な職業で問題が出にくい」人も多いかもしれません。

群指数について

発達障害の特性や傾向を見るにあたっては、「ディスクレパンシー」よりもさらに群指数「言語理解」「知覚統合」「注意記憶」「処理速度」の4つの数字のばらつきが重要になってくるようです。

まずはそれぞれ、高い場合、低い場合にどんなことが起こるか、一般的な例を紹介します。

項目 能力
言語理解(VC) 高い:自分の考えを言葉にして伝えるのが得意。
低い:会話についていきにくい、自分の考えを言葉にするのが苦手。
作動記憶(WM) 高い:暗算や、口頭で聞いた電話番号などを覚えるのが得意。マルチタスクが得意。
低い:うっかりミスが多い。電話口で聞いた人の名前や要件を忘れてしまいやすいなど。
知覚統合(PO) 高い:手先が器用、パズルのような組み立てや、ものごとの分析が得意。
低い:地図を読むのが苦手、話の要約や説明が苦手。手先が不器用なことも。
処理速度(PS) 高い:指示書に従って素早く正確な作業ができる。家事なども得意。
低い:仕事のペースが遅い、単純作業でのケアレスミスが多い。

 

群指数のばらつき

この群指数のばらつきは、「自分の思う自分」と「実際に他人から評価される自分」の差を生みやすいそうです。
通常、自分では、群指数のうち一番高い数値を「あなたの本当の能力」と捉えます。そして、他人からは群指数のうち一番低い数値を「あなたの本当の能力」とみられるのだそうです。群指数の差はまさに、自分と他人との間のギャップに直結するのです。

例)
●「言語理解」>「作動記憶」 差が15ある人
高学歴でしゃべるのも得意だが、物忘れが多くケアレスミスが多い。一見ちゃんとしている風に見えるので、「やる気がない」と誤解を受けやすい。

●「知覚統合」>「処理速度」 差が20ある人
問題点にすぐ気づいたり、「こうやったら上手く行くな」という見通しを立てるのが得意だが、実際にその通りに作業をするのが苦手。自分の理想と、自分で作れる現実に差が出てしまい、落ち込みやすい。


このように、得意な面と不得意な面があるからこそ、そのギャップに困難が生じるわけですね。まさにこれが発達ならではの「困り感」の正体に近いのではないかと私は考えています。

以下は引用ですが、このばらつきから「どのようにすると困難が取り除けるか」を考えることもできるようです。

たとえば、処理速度の指数がほかの三つの指数より高い場合なら、次のようなことが考えられます。「学習内容を理解できるまで時間がかかる。しかし、機械的学習が得意で、くり返し課題に取り組むことで、学習内容を理解し習得している。」「継続して、学習課題に取り組めるように、スモールステップで課題を提示していくことや理解力、記憶力を高めるために1 時間の課題をノートに書き、自分の考えをまとめていく学習が有効である。」
※引用元:WISC-Ⅲ知能検査結果の見方

 

下位検査項目について

前回もお伝えした通り、最も重要になってくるのはこの下位検査項目だとよもぎは考えています!というのも、言語性IQと動作性IQの差(ディスクレパンシー)が大きくなくても、群指数の数値にばらつきがなくても、下位検査項目に大きな凸凹がある場合、やはり生活に困難が生じることがあるからです。

下位検査項目の点数は19点満点で、10点が平均となります。通常、全検査IQが平均の方であれば、7~13(差が5~6程度)の間に収まることが多いそうです。

ではこちらも順に、高い場合と低い場合の特徴を見ていきましょう。※一部調査中の項目あり

項目名 意味づけ
単語 高い:興味範囲が広い。学識、知的洗練、知的努力が総合的に反映されている。
低い:興味範囲が狭い。抽象的思考が苦手。自分ルールの定義、擬音語を多様することも。
類似 高い:学業的に優秀な場合、点数が高く出やすい。
低い:認知のゆがみ、思考障害がある場合もある。
※ただし、類似が高得点、理解が低得点の場合は「認知のゆがみ」が生じやすい可能性がある
知識

高い:学業的に優秀な場合、点数が高く出やすい。
低い:教育を受ける機会が乏しかった場合など。
※受けてきた教育により差が出やすい。また、検査に対する不安が強い、自信のない性格の場合「わかりません」という回答で回避しがち。

理解

高い:ソーシャルスキルが高い。常識性や、社会的判断力を示している。
低い:日常生活で適切な判断ができない場合が多い。

算数 高い:課題への注意と処理スピードが高い。
低い:注意力が散漫、あるいは処理スピードが遅い。
数唱 高い:集中力、短期記憶力が優れている。
低い:不注意傾向あり、集中力が弱い。
語音 ※調査中m(__)mすみません
配列

高い:細部への注意、論理的な思考、他人への興味、洞察力が高い。
低い:注意力や洞察力の不足。ASD傾向や、奇妙な思考が明らかになることもある。

絵画 高い:知覚、集中力、本質的要素を見分ける能力が高く、環境への興味が強い。用心深い性格の場合も多い。
低い:集中力の補足、本質的要素を見分ける能力が弱い。
※一般的知能と高い相関関係があり、同様に一般知能との相関がある『単語』と類似した得点を示すことが多い。
積木

高い:分析的才能、問題を解決する速度と正確さがある。
低い:視覚・運動系の機能低下や器質的障害の可能性がある。注意力が低いことも。
※柔軟な思考力、視覚・運動系の協応水準が高い被験者は高得点になりやすい。正常な場合、積木・配列・組合せの点数は相関が高くなる。

行列 高い:抽象的な物事の課題解決能力が高い。
低い:抽象的な物事について考えるのが苦手。
記号 高い:短時間で取得する初期技能の高さ、単純課題への持久力、視覚・運動系の機敏さや動作速度も関係する。
低い:他の検査項目に比べ重大な問題を示すことが多い。(例)正確に写そうとするあまり作業速度が遅れやすいなど(脅迫的観念)
符号
組合せ 高い:新しい解決法を探索する自由度や可塑性が高い。
低い:自由度や可塑性にかけ、固執性が強い。不安状態を示すこともある。

 

自分の得意不得意は?

こちらも、まずは自分の「平均値」を出すことが重要だそうです。一般平均は「10」ですが、自分の結果はどうだったでしょうか?例えば「8」が平均ならば、「8」以上の項目は得意項目、「8」以下の項目は苦手項目とざっくり分けてしまってください。

よく発達障害のSSTにおいて「得意項目を伸ばす」というものがありますが、ここでいう「自分の平均値以上の項目」を得意項目と考えてよいと思います。
その中に自分で思っていたよりも、点数の高かった意外な項目など、ないですか?こういう気付きで、その先につなげやすくなっていきます。

下位項目の凸凹

下位項目の凸凹のチェックも重要です。通常、差が5~6程度になると書きました。これを超えるばらつきがある場合、日常生活で困難が生じやすくなるのだそうです。

また、同じ群指数のグループ(同じ色のセル)内で凸凹がある場合は要注意です。例えば、「作動記憶グループ」の『算数』『数唱』『語音』は、どれも「注意力」を見る項目とされていますが、これに凸凹がある場合「ただ注意力が散漫なだけではなくて、他に理由があってそう見えている可能性」が考えられるかもしれません。

自分自身の脳の特性、性格、その他の病気など、色んな【潜む問題点】が絡み合って出ている結果なので、1つ1つの項目の結果について「どうしてかな?」と振り返ってみるのがお勧めです。


本当はこういった分析を心理士の方が「当日の態度」「受け答え」「成育歴」などから総合して分析して下さるはずなのですが、残念ながらそこまでのサービスを提供していない・受けられていない人もいると思います。

自分を知るためにはWAIS-Ⅲ以外の方法も

WAIS-Ⅲの結果だけではわからない自分の特性もたくさんあると思います。
簡単なものを上げると、感覚過敏の問題や、性格的な問題などがそうです。そういった別の特性と、WAIS-Ⅲの結果を合わせてみて初めて腑に落ちることもあると私は考えています。

WAIS-Ⅲを受けられた方は、ぜひこれを期に自分の色んな特性を探してみてはいかがでしょうか。

ちなみにこれは他の記事でも何度もお勧めしている本です。
『医師の作った「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン』
"認知特性"という、情報のインプット・アウトプットの方法についての本です。実は人それぞれ認知特性は異なります。「耳で聞いた情報を音で覚えておくのが得意な人」「目で見た情報を、文章のように覚えておくのが得意な人」「目で見た情報を、図のように覚えておくのが得意な人」などです。

この本には簡易チェックテスト付きで、傾向と対策について読みやすく書かれているので、皆さんにお勧めしています。

「WAIS-Ⅲの結果では言語性IQが高かったから、聴覚優位なのかな?と思っていたのに、このテストをしてみた結果、視覚優位だということが分かった」というようなこともあると思います。本が好きで、文章を書くのが得意で、説明が得意な人であれば、認知特性自体は視覚優位でも、言語性IQが高くなることは考えられますよね。

あくまでWAIS-Ⅲのテストはその傾向が強いことを示す数値なので、完全には当てはまらず、違う特性があることもあり得るわけです。WAIS-Ⅲの結果だけを鵜呑みにせず、色んな角度から自分の特性を探ってみるととっても面白いですよ。

まとめ

自論ですが「自分の特性を知ることで、対処法を見つけていくことができる」というのが、社会適応をしていくにあたってとても大事なプロセスではないかな、と思います。

WAIS-Ⅲの結果はあくまで「その特性の1つを知るため」のものだと思っています。
全体と比較して、IQが高いからどうだ、低いからどうだ、ということで一喜一憂しないことも大事だと思います。(気になってしまう気持ちはもちろんわかります...!)

結果の中には自分が考えたこともなかった新たな発見があるかもしれません。これも今まで知らなかった自分自身の姿なんだな、と向き合って次の一手を考えてみてはいかがでしょうか。


次回は参考までに、上記の情報を元に、よもぎ自身のWAIS-Ⅲの結果を再度掘り下げます。興味のある方はぜひご覧ください。
→NEXT:自分のWAIS-Ⅲの結果をさらに詳しく掘り下げた

本日も最後までお読みくださりありがとうございました😊

*1:眉唾情報です。笑

*2:前述の通り、環境によって言語性IQが高く出やすいことがある